大人になる、ということは、自分がどういう人になりたいのかを実現していく過程であって、この物語にあるような「種探し」でもあるのではないかと思いました

A.Hさん 40代女性 外資系エアライン勤務 千葉在住

「子サンタポポナの種物語」を読ませていただきました。絵本・・・と思っていたので、壮大な物語の構成にまず驚きましたが、セナさんのあふれる気持ちが物語になったのだ、と、私もゆっくりとそれを読ませてもらうことにしました。

 

物語には3つ、いやそれ以上の物語が含まれていて、読むにつれて想像力をかきたてられる内容でした。私がとても印象に残ったのが、十六章『自分の種』のところです。「自分がいったいどんなサンタになりたいのか」「地球や子どもたちの未来をどのようにしたいのか」。ドキッとする言葉でした。大人になる、ということは自分がどういう人になりたいのかを実現していく過程であって、この物語にあるような『種探し』でもあるのではないかと思いました。私なりにそのように感じながら物語を読み進めました。

 

私が興味をもったのが、地球の成り立ちのところです。私はアメリカの大学では単位にこだわらない遊学だったので、自分の興味のある事にチャレンジ!と思って基礎もないのにAnthropology(人類学) Psychology(心理学,)、Women’s Study(女性学)、Drug Abuse(薬物乱用)と色んな授業を取ってみました。中でもAnthropologyは進化論から民族学のようなものもあってとても面白かった事を思い出しました。

 

最近、進化論に関する本を読んだところで、ダーウィンの進化論の欠点は他人を助ける行動―

―利他行動―を説明できないというところだそうです。働きアリのように子孫は残さないけれど、淘汰されずに種の保存が行われている生物や、もちろん人間も。地球には説明しきれない不思議が一杯なんだなと感心するとともに、説明できない利他行動があるということは素晴らしいことだと思いました。セナさんの地球の成り立ちは子どもの気持ちでワクワク読みました。

 

種は形も大きさも違うけれど、光り方は同じ・・・というところにもセナさんの想いを感じました。私たち大人は、昔は『輝いた自分』を目指して希望に満ちて社会に出ていきましたよね。でも大人になると忙しさにもまぎれ、自分の生活の安定もあり、『自分の種』はどんなだったかな?と思うことがあります。

でも、大事なのは自分の居場所の中でも、いつも『自分の種』をしっかりと持っていきることではないかと思います。すべての人が偉人のような立派な人生を送ることはできないけれど、家族の支えとなったり、自分が属している社会の中で少しお役に立てることができれば種が実をつけて実るのではないか考えることができました。

 

物語と挿絵がとても合っていて素敵だなと思いながら読み進めました。セナさんが時々セオナに、またポポタナになってポポナの成長を守っているのが伝わってきました。

 

日本には日本の素晴らしい文化があり、私も恩恵をもらって暮らしています。でも時々思うのは、阿吽(あうん)の呼吸じゃないですが、曖昧でも通じる文化の中で『自己』というものを確立するのには自分なりに色々と努力がいった(いる)ということもあります。子どもの時に、自分はどういう人なのか、また自分の考えを述べたりする機会がとても少なかったように思います。私たちも子どもの時には『私、こうやと思うねん!』と言っていたかもしれません。それをしっかり聞いて、受け止めて『そうだね』と言ってあげると、子どもは自分の考えというものを少しずつ確立していくのかもしれませんね。豊かな想像力は豊かな心と発想を生み出します。私は子育てをしていないので、あまりわかったような事は言えないけれど、大人になって役に立つのはどの学校に行ったかとかではなく、自分で考える力をもって豊かな発想で物事を考えられること、それには空を見て雲の動きが面白いと思う気持ちや、昆虫の暮らしに「なぜ?」と思う気持ちなどではないかと思います。

 

この地球上に生きる子どもたちの心の中に、いつまでもワクワクが続きますように・・・。

 

With the best wishes…..