かぜのなかのおかあさん
阪田寛夫
おかあさん
としをとらないで
かみがしろくならないで
いつでもいまの
ままでいて
わらっているかお
はなみたい
おかあさん
ねつをださないで
あたまもいたくならないで
どこかへもしも
でかけても
けがをしないで
しなないで
おかあさん
はながさきました
かぜもそっとふきますね
いつでもいまが
このままで
つづいてほしい
おかあさん
詩人、阪田寛夫さん(1925-2005)の詩です。
さかたひろおさんは、
「サッちゃん」や「ねこふんじゃった」の歌詞など、
ふと口ずさみたくなる詩も多いですが、
この詩は、私は、音読できない・・・
自分の口で音にした途端に、
そこにあることばが、
一気に遠くはなれて
飛び去ってしまうようで。
なので、ひらがなのそのまんま、
じっと心のなかで。
「おかあさん」のところに、
おとうさんおかあさんはじめ、
歳のはなれた大切な人が、
そっとそこに現れたりします。
ずっと年上の人も、ずっと年下の人も
先に逝ってしまった、
大切な人も
今日も、かぜのなかで生きている、
あたたかいいのちに・・・